「何も変わらない」と答えたけれど

母とのくらし

朝から母のインフルエンザワクチンの接種へ。

1週間前にも行ったばかりの病院に、また行くのかと思うと、なんとなく気が重い。

今回はいつもの診察とは手順が違うらしく、受付窓口も別。問診票を書いて、呼ばれるのを待つ。

通常の診察よりは時間がかからないとはいえ、やっぱり待つ。

その日は父の月命日だった。

月命日には墓掃除に行くことにしているので、母を連れて墓へ向かった。

以前は一人で来て、掃除をして、ベンチに座ってぼんやりする。そんな場所だった。

墓掃除をしながら、いろいろ考えたり、何も考えなかったり。

自分の気持ちを整理するための場所でもあった。

でも、母を連れて行くようになってからは、どうも違う。

素の自分ではなく、「ちゃんとしなくちゃいけない自分」がいる。

同じ場所なのに、前とは違う場所になってしまった。

そして昨日も、やっぱりずっとイライラしていた。

誰がやったのか知らないけれど、線香皿の網が逆さまに無理やり入れられていて外れない。

なんでこんなことになってるんだ、とイライラする。

供えられていた缶コーヒーの底は錆びていて、墓石に跡が残っている。

こすっても落ちない。

それにも、うんざりする。

母が選んで買った花は、もうしおれている。

それを見て、また呆れる。

何を見ても、いちいち引っかかってしまう。

外れない線香皿の網を前にして、母が「もうこのままでいいんじゃない?」と言った。

その一言をきっかけに、何もかも嫌になった。

もういい。

私はその場を母に任せて、車に戻った。

お供え用に買ってきたアイスコーヒーと生どら焼きを、車の中で食べる。

少し時間が経って、ようやく頭が冷えてきた。

また墓に戻って、線香を添える。

母が供えてくれた花を見て、ちゃんと生けてありホッとする。「キレイだね」と素直に言えた。

そして帰る。

霊園から見る景色が綺麗だった。

空が青くて、雲もきれい。イチョウ並樹もいい。少し救われた。

途中ではま寿司に寄った。

母と二人、ほとんど無言で食べた。

本当に、なんで私はこんな気性の人間になってしまったんだろう。

もっといろんなことを流せれば、きっと楽なのに。

午後はケアマネさんの訪問があった。

要介護になったことで、訪問は毎月になった。

これも、地味に負担になる。

以前は地域包括支援センターにお世話になっていたので、今回のケアマネさんとは初めての面談。

母の体調を確認したり、最近どんなことをしているのか話したりする。

「最近、何か変わったことはありましたか?」

そう聞かれて、一瞬考える。

変わったこと。

母のことではなく、変わったのは私の心境と状況だ。

でも、そんなことを言うわけにもいかない。

「ないですね」

そう答えた。

ケアマネさんを、母と二人で玄関まで見送る。

そして、いつもの生活に戻る。

何も変わらない。

いや、本当は少しずつ変わっているのかもしれない。

母のことも、私のことも。

でも、それを口にすることなく、「何も変わらない」と答えてしまった。

昨日もまた、そんな一日だった。

🐼 丸のひとこと:口には出さなくても、少しずつ変わっていく気持ちはちゃんとここに書いてある。それで十分。

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